転倒リスクと咀嚼能力の相関性評価研究

今回の研究の目的

咀嚼能力の維持・向上を期待した簡便なトレーニング「ガム嚙みトレーニング」によって咀嚼能力のみならず、バランス感覚及び運動機能評価項目の開眼片足上げが有意に向上しました。
この結果から、ガム嚙みトレーニングによって転倒リスクを改善できると結論づけましたが、実際には定かではありません。
今回は、バランス感覚及び運動機能評価に転倒リスク可視化装置「StA²BLE(ステイブル)」を用いて立位機能評価を実施することで、より実際の臨床に近い転倒リスク評価を行うことができると考えます。
転倒リスクと咀嚼能力の相関性を評価することで、ガム嚙みトレーニングによって転倒リスクを改善できるのかを検証することを目的としています。

研究方法

①研究デザイン

今回は、前向きの介入研究で前後比較試験を実施しました。

②研究背景

今回は開発者及び歯科医療関係者からボランティアを募り研究対象者としました。
転倒リスク評価はStA²BLEによる立位年齢®で、咀嚼能力評価はグルコセンサーによる計測値としました。
トレーニングはそれぞれガム嚙みトレーニング、転倒予防トレーニングを用いました。
評価期間は30日間としました。

③研究対象

令和5年10月の段階で47名の対象者からトレーニング前のデータを採取して、無作為抽出でガム嚙みトレーニング群(A群)23名、転倒予防トレーニング群(B群)24名としました。

④評価方法

転倒リスク評価方法

「『あなたの立位年齢®何歳ですか?』
転倒リスクの見える化により、転倒事故ゼロの社会を目指した活動をしています」をスローガンに、横浜国立大学発ベンチャー企業UNTRACKEDで開発されたStA²BLEで計測された立位年齢で評価しました。

StA²BLEについて詳しくはこちらもご覧ください。

StA²BLEの詳細

転倒リスクをわずか1分間で数値化できる装置です。
StA²BLEは、ライトタッチ現象を応用した全く新しい転倒リスク計測法です。
筋力や体力だけではなく感覚機能に起因する真の〝転倒リスク”を、立位年齢®として1分間で客観的に数値化します。

StA²BLEによる評価

60秒の計測の後、解析結果が出てきます。StA²BLEによる解析結果の画像

咀嚼能力評価方法

グルコセンサーを用いた咀嚼能力検査としました。

グルコセンサーを用いた咀嚼能力検査の画像

ガム嚙みトレーニングの詳細

①顔全体を使って左右の奥歯で交互に20回ずつガムを噛みます。力を入れて噛むことを意識して、1回に1秒ほどかけて噛みましょう。
②20回噛んだ後にも大げさに顔面や唇を使って、反対側へガムを移動させてさらに20回噛みます。
③片側3回ずつ、合計120回噛んだらガムは廃棄します。

ガム嚙みトレーニングの効果

ガム噛みトレーニング前

ガム噛みトレーニング前

ガム噛みトレーニング前

 

ガム噛みトレーニング後

ガム噛みトレーニング後

ガム噛みトレーニング後

結論

転倒予防トレーニングによって立位機能評価は改善し、咀嚼能力も改善しました。
一方、ガム嚙みトレーニングで咀嚼能力は改善するが、バランス年齢は悪化しており立位機能は改善を示しませんでした。
したがって、転倒リスクと咀嚼能力の間には相関性が認められず、立位年齢®が悪化した場合、つまり転倒リスクが上がった場合には、感覚能力やバランス年齢を改善するべく転倒予防トレーニングを実施する必要があることが判明しました。
今後は対象年齢を高齢者以降として、転倒リスクに関してより実際の臨床に近い状況での検証を進めていきたいと思います。

update: 2024年7月25日2:42 pm